18 受験必勝法 4
次に、試験というものの本体を考えてみよう。選抜試験の場合、実際の得点より順位のほうが大切であると述べた。ある試験があり平均が50点であったとして、自分は 70点であった。この時 70点は高得点なのか、そうでないのか、これは分布の形によって違う。ほとんどの人が 50点近くに密集しているなら 、70点は極めて高得点であるが、0点もいる代わりに80~ 90点がゴロゴロいるという、なだらかでない分布の場合70点は決して高得点とは言えない。そこで分布のなだらかさを示す指標として、分散というものを使う。計算の仕方は成書に譲る。分散が大きければなだらか、小さければ平均の周りに固まっていると思ってよい。その平方根を標準偏差というが、実際の得点と平均の差(この場合70点- 50点= 20点)をこの標準偏差で割った指標は、 70点がどの程度全体の僻地かを表す指標となる。自分の僻地度が高いほど順位は上なわけであり、実際にこれを数値で表す時はどんな試験でも平均を50点として、それに僻地度を加えた値を、自分の位置とすることができる。これを偏差値という。計算は成書に譲る。つまり偏差値 70の人は 60の人より必ず順位が上となっているということである。だから、相対的に自分が全体の中でどの位置にあるかを見ているときは、自分の偏差値がそれをよく表していると言える。皆さんは、先に述べた勉強法を取れば必ず偏差値は上がっていく。
資格試験の場合はこれとは様相が違う。具体的に医師国家試験を例にとろう。必修問題とか禁忌枝問題とか、細かいことは色々あるのだが、おしなべて400問出題され、 75%以上取れれば合格ということになっている。すべての医学的事項は膨大であるから、この難易度レベルをレベル∞としよう。この中で教科書に載っている事項はかなり限られ、この中から試験問題が出題される。このレベルをレベル20と設定する。レベル∞はレベル20よりどれぐらい大きいか想像もつかない。そしてこのレベル 20の中から試験に出るのはおそらく全体の 1/ 10ぐらいの範囲であって、これを全部習得するするレベルをレベル10としよう。レベル10がすべて常識となっていれば、必ず合格する。面白いのは75点ということである。25点はミスしても免除されるということである。人の命を預かろうという立場であっても25%ぐらいは知らなくてもまあいいよ、ということなのである。考えようによっては実に鷹揚だとも言えるのであるが、人間はそんなに完全ではないというふうに言っているようでもある。人の命なのだからレベル10ぐらいの試験なら満点を取らなければ合格させないというなら,おそらく合格者は 0であろう。ミスもど忘れも含めて、ほぼすべての試験が合格点を60点から 80点に設定しているのはそういう事情である。決して 90%以上の正解を求めてはいない。それは人間には不可能なことなのだ。
年は過ぎた、現在の筆者が何の準備もなく医師国家試験を受けたらどうなるか?卒業後、かなりの実地の経験を積み、勉もいろいろしたであろうから、悠々とと満点でしょう。とんでもない。50点取れるかどうかである。でもそれで成り立っているところが医療である。
その昔、フィールズ賞を獲得した日本の大数学者、広中平祐氏にまつわる面白いエピソードがある。広中氏は象牙の塔にこもっている孤高の数学者というイメージではなく、一般民衆にも、とても親しみやすいキャラクターを持った方であった。約50年ぐらい前だったと思うが、マスコミで一つの企画が持ち上がった。当時のナンバーワンとうたわれた受験生と、広中平祐を、大学数学入学試験問題で対決させようという企画である。その企画を広中氏に話したところ、「はあ、まったく勝負になりませんよ」という返事であった。ほとんどの方は単なる高校生ごときが、大数学者と勝負するなど100年早いというふうに受け取るであろうが、実は全く違っていて、広中氏続けて曰く、「私が受験のプロに勝てるはずがないではないですか。勝負は歴然としています。私の負けです。ただし時間無制限ということであれば、私はかなりいいところまで迫ってみせる自信はありますよ」どこまでも謙虚な方である。筆者もこのようになれたらよいのだがといつも思っている。
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