34 減塩、高血圧、コレステロール、糖尿3
高血圧ラットというのがある。京都大学の岡本耕造教授によって作り出されたものでSHR(spontaneously hypertensive rat)といい高血圧の研究に使用される。筆者もこの研究室で、研究に携わっていたことがある。ラットの中で高血圧のものを何代も掛け合わせて、純粋に高血圧の遺伝子を発現できるように作り出された鼠である。その研究でわかったことは、ただ高血圧のみでは、脳卒中は発症しないということであった。SHRの中で、その遺伝素因の中に何らかの因子が加わったのであろう。さらに進んで、脳卒中を高率に発症するラットが作り出された。これを SHR-SPという。これは高血圧ラットというより脳卒中ラットだというべきものである。人間に適応できるかどうかは不明だが、確かに脳卒中遺伝子のすぐ近くに脳卒中遺伝子と言うものが存在するのかもしれない。こう考えると、ただ単に血圧を下げただけでは脳卒中を予防することにはならないと思われる。脳卒中遺伝子を抑え込んで初めて実現できることである。ただ現状では、高血圧を抑えると多少脳卒中の遺伝子を抑え込めるらしいということがわかっており、それに過ぎないことである。
或る薬を飲んだら。或る疾病の発生頻度が1/3になった。劇的であるという記事を見ることがあるが、注意を要する。10000人のうち3人だったのが1人になった場合どうか?たしかに1/3にはなっているのであるが、 9997人安全だったのが 9999人安全となったというだけのことである。差はあるか?感覚的にはほとんどない。誤差化もしれないと思うであろう。ある地域で平均血圧が高くなったら脳卒中の発生頻度が高くなった。血圧が脳卒中の原因であるというのはは正しいか?もしかしたら血圧の高い地域との市町村合併によって増えただけなのかもしれない。いろいろな調査が必要となるのである。
統計をやっていると相関関係が出てくる。どうしてもそれを因果関係と結びつけたくなる。天の味噌汁にも書いたが、科学的に行こうとすると、どうしても心理的に矛盾率から排中律へ移行しやすいのである。本当はわからないが正解かもしれないのに、AでなければB以外にないというふうになるのである。
多少うがった見方をしてみよう。1970年代から減塩政策が取られ始め脳卒中の頻度がだんだん減少してきた。これは相関関係であるが因果関係があるかどうかはわからない。
結核という病気がある。昭和の始めの頃までは猛威を振るっていて、死病と恐れられたが、リファンピシンという抗生剤が出現したおかげで、そこから減少した。現在の細々と命脈を保ってはいるが、昔ほどの猛威はなく、治る病気となっている。リファンピシンの出現が結核を抑え込んだと思えるが本当ににそうだったのか?そうかもしれないし、そうでないかもしれない。単なるトレンドだったのかもしれない。つまりリファンピシンに関係なく結核は、そろそろ流行る危ないものかではなくなって、つまり人間に馴染んできて悪さをしなくなったということも考えられるのである。統計を見ると事実リファンピシン出現の数年前から結核はかなり減り始めていたのである。血圧と脳卒中の関係も同じように見てみると、1970年代頃より人々の生活状態、つまり栄養状態が良くなり、つまり、蛋白質、脂質を多く摂るようになり、血管も丈夫になって、脳卒中が同時に減ったとも考えられるのである。つまり高血圧と脳卒中減少とは相関関係はあるが実際の因果関係は無いのかもしれない。本当は分からないのである。しかし先ほど述べたように、因果律が排中律になったため、わからないという選択肢はなく、相関関係がそのまま因果関係に定着したということなのかもしれない。もしここに述べたことが本当であるなら、脳卒中は高血圧のせいではないのかもしれない、そうすると降圧する意味がなくなる、そうすれば減塩の意味はなくなる、という風にすべてが崩壊してしまうであろう。筆者は現代の医療を否定するわけではない。人心の安定のためにも現状の維持は必要であると思う。ただそれ以外の考え方も十分成り立つ可能性はあることを言いたいだけである。
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