29 思ったことは実現する 2
無能唱元という方は、禅宗の僧侶である。考え方の基本は唯識論にある。いかにして自分の望んだことを実現させると言うのか?
ここでは、まず阿頼耶識という言葉を説明しなければならない。まず、人間の意識は大きく分けて八つに分かれているという。眼、耳、鼻、舌 身、意、末那識、阿頼耶識の八識である。そして現実にある森羅万象は、すべて人間の心の働きによるのであって、物質、その他、客観的存在は全くなく、すべてにおいて主観的な存在でしかないという。ではその存在とは何か、「空」というのである。これを唯識思想という。五世紀頃インドに発生し、無著、世親の兄弟によって体系化されたという。つまり唯識とは空を基本にした、唯心論であって、唯物思想ではない。難しいが、分かる人にはわかる、わからない人には全く分からない、筆者は全く分からない。
さて八識であるが、最初の六つを顕在意識という。字を見れば何を言っているかわかるだろう。眼、視覚、耳、聴覚、鼻、嗅覚、舌、味覚、意、意識する意識の六識である。つまり表面に現れた感覚である。末那識は潜在意識ともいう。人間の心理の奥底に隠れるように存在し、決して表に出ることはない。しかし影の中から人間の意識に影響を与えている。小さい意識かというと全く違っていて、とても大きい。どれくらいか?この七識を100%の意識とすると、顕在意識が 5%、潜在意識が95%という人もいる。つまりわれわれはほとんど潜在意識で生きている。医学的に言うと、最初の六識を司るのが体性神経、つまり、感覚神経と運動神経である。末那識の支配する神経は、自律神経である。我々は意志の力で、自由に消化管を動かしたり、血圧を上下させたり、心臓の鼓動を強めたり弱めたりすることはできない。それは人間の意志の届かない、自律神経の働きによってなされているものであって、生命とは自律神経であるといっても過言ではない。通常は表面には出ないが、つまり意識が支配している「起きている状態」の時には潜在意識は顔を出さないが、意識がなくなった時、つまり眠っている状態の時は、潜在意識が表面に出てくる。これが夢である。人間は睡眠同期によって常に夢を見ているのであるが、この大半は覚えていない。覚醒寸前の部分だけ思い出すわけで、通常はこれを夢を見たと言っているのである。
さて前置きが長くなったが阿頼耶識である。これはなかなか難しい。わかる人にはわかるがわからない人にはわからない。あの三島由紀夫でさえ、この阿頼耶識の秘密が解けず苦しいんだという話が残っている。筆者もわかっている方ではないので、説明するのも気がひけるが、一応、一通りのことを書いてみよう。阿頼耶識というのは、一言で言うと人類という種すべての根底に横たわっている大きな種としての意識のことである。この意識の海の上に各個人の意識が突出しており。その突き出た山のところが六識までの顕在意識と、七識である末那識である。突き出た先はバラバラなので個人は他の個人と別のように見えるのであるが、その根源をたどっていくと、それは阿頼耶識で繋がっているということなのである。
ここからが本論近くになるのであるが、個人が顕在意識の中で、こうしたいああしたい、あるいは金をこれだけ欲しい。あの人に好かれたいなどと本気で願うと、(この本気でというところが大切だ)この願望は末那識から阿頼耶識へ入る。そこで時間の経過ととも、に「燻蒸」されて意識へ戻ってきて、願望が実現するというのである。このように正の願望が実現するのは良いのだが、負の願望も同じように区別することなく阿頼耶識は実現するらしい。貧乏は嫌だ嫌だと強く望むと、その「貧乏」のところだけが実現して、結果としては望まざる貧乏が実現してしまうこともあるらしい。つまり善悪の区別なく望んだことは阿頼耶識が実現してくれるというのである。無能唱元氏はこの阿頼耶識を基本にすえて、人の望みを実現させるということを強く説いておられるのである。注意としては、いついつまでにということは望んではならないらしい。ただ実現を望む。必死で願うと実現するらしい。阿頼耶識というのは誰にでも共通してある。読者の方も強くなにかを望むと、きっと阿頼耶識が答えてくれるに違いない。
この阿頼耶識というのは、西洋にも似た考え方がある。それを唱えたのがフロイトの弟子ユングである。西洋の方らしく、実証的な方法で、人類には人類の、猿には猿の共通の意識がありそうだということを説いておられる。これを集合的無意識という。 ヨーロッパのサルがある時。芋を川で洗って食べたら良かったので、多数の猿が真似をするようになった。しかし驚くべきことにアジアの猿も同じ時期に同じことを始めたという。これは集合的無意識によってヨーロッパの猿とアジアの猿が無意識の中で繋がっていると考えざるを得ないとしている。人間でも同様の実験があり実証されている。詳しくはネットにいろいろあるので参照なさるとよいだろう。
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