⑩ バイリンガル 1
更新日:10月23日
今は日本中が英会話ブームのように見える。ひところのように外国に旅行に行く機会が減ったとはいえ、英会話スクールというのは繁盛しているらしい。世界を見てみると、日本以上に英語学習市場といわれるというのは増えているようだ。世界的に見ると、ビジネス関連で規模が拡大していると思われるが、日本ではもちろんビジネスもあろうが、海外旅行、ちょっと英語が話せたらカッコいいというような姿勢で学習する方も多いようだ。英語を話せるとカッコよい、知的だと言うが、英語を話せるということはそんなに知的な活動ではない。アメリカに行けばどんなバカだって普通に英語を話すし、2~3歳の幼児でも英語で両親とコミュニケーションできる。だから日本人が英語を話せるからといって、特別に知的に優れていることはないということは抑えておきたい。誰でもできることなのだ。
最近はAIが発達してきており、音声入力、出力もかなり進歩してきている。先日、診療中に日本語の全くできないロシア人が診察にやってきたのだが、音声通訳ソフトを使ったらこちらの音声がスマホ上でロシア語になって出てきて、意思の疎通ができ、すんなりと診療ができた。そのうちに音声入力すれば英語で音声出力ができる、逆も可という時代になるであろう。実はすぐそこまで来ている。そうすると日本語さえ話せれば世界各国の人たちと現地語で話すことができるようになる。便利な世の中になったものだ。そうすると英会話スクールへ通う意味など全くなくなってくるかもしれない。英語を話せても知的でもなんでもないのだから。
子供は言語習得能力が高い。すぐ話せるようになるが、忘れるのも早い。筆者がアメリカ留学中に経験してしたことだが、1年前渡米した筆者の先輩が外人と話していた。でも、よくわからなかったらしい。側にいた5歳ぐらいの自分の息子が,お父さんこの人こうこうこういうことを言っているんだよ、とお父さんに「教えて」あげたということがあった。いやはやである。帰国してその子はどうなったか1~2年のうちに全く英語は喋れなくなった。長じても英語は不得手だったということである。つまり英会話は知的作業ではない。
バイリンガルというのは二か国語を自由に操れる能力のことを言う。日本語も英語も現地の発音、言葉で意思疎通ができるということである。このため、自分の息子、娘をバイリンガルにしようと小さい頃から外国に留学させることもあるらしい。ちょっと考えるととても羨ましいことのように見える。しかしそこには大きな危険が潜んでいると言語学者は言う。
小さい頃からバイリンガルにしようという訓練を受けていると、大半の人たちは日本語も英語も逆に不十分になってしまうとのことである。日常の会話ぐらいは日本人ともアメリカ人とも意志を通じ合えるであろうが、少し複雑なことになると日本語でも説明できないし、英語でも説明できない。つまり母国語としての基礎が全くなくなってしまうのである。知的作業を日本語でも英語でもある程度できる人というのは、ごくごく限られた一部の人たちのことであって、通常能力の人たちは母国語を失ってしまうのである。だから筆者の考えとしては日本人なら日本語をがっちり母国語として定着させ、その基礎の上に立って外国語を学ぶべきだと思う。どんなにあがいても外国語のニュアンスなど日本人には獲得できないのだから。だから、英語学習は中学校からで十分であると感じている。もっと言えば、英語を活用してビジネスに使える人と言うのは、高々日本人全体の数パーセントにしかすぎないのである。外国語で意志疎通を図るとしたら、学者なら学術語で、芸術家なら分かり合えるであろう単語を羅列するだけでよいのである。もちろんもちろん日常でも相手の気持ちを分かろうとしないで、建前だけで話すのである。それで充分意思疎通ができた「気」にはなれるであろう。
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